ブラックホールと重力波

重力波とは、「質量を持った物体が存在すると、それだけで時空(重力場)にゆがみ(ひずみ)ができ、曲率
が生じる。そしてその物体が運動すると、この時空の「ゆがみ」がそのまま光速度で伝わる。言いかえれば、
「ゆがみ」の時間的な変動が、波動として光速度で伝播する、という現象です。このような「ゆがみのうねり
(波)」が重力波です(図-1)。

図-1

(図-1)何もない空間は平らであるが質量の大きいブラックホールなどの重い星があると周囲の空間がゆがむ。重い星が互いのまわりを回ると「ゆがみ」が波となって光速で伝わる(※1)

この重力波は、アインシュタインの一般相対性理論(1961年)に
基づいてその存在が予言されていましたが、100年もの間世界中の
研究者らによって検出が試みられたが、検出することができません
でした。しかしついに2016年2月11日、アメリカのLIGO科学
コラボレーションが初めて直接捕えることに成功しました。

重力波は、巨大な質量を持つ天体が光速に近い速度で運動するときに
発生する波なので、例えばブラックホールのように大きな質量をもった
天体が「連星系を形成したり」、「衝突したりする」ことによって生じ
ます。

今回直接検出された重力波は、すでにその存在が確認されている
天体、たとえば超高密度の天体である中性子星の2つからなる連星が
合体する際に生じたものとほとんどの研究者は予想していました。
しかし解析の結果、2つのブラックホールが合体したことによって
生じた重力波であることがわかり、研究者たちもびっくりしています。
※1 中日新聞http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK201621202000111.html?ref=rank より

今回直接検出された重力波は、解析の結果約13億光年離れた銀河で、太陽の29倍と36倍の質量をもつ
2つのブラックホールが衝突したために生じた重力波であることが分かりました。衝突した時点では、太陽の
3倍の質量が一瞬でエネルギーに変換されたと解析されています(図-2)。

ブラックホール連星イメージ

 

(図-2)合体する直前のブラックホール連星のイメージ図
The Simulating eXtreme Spacetimes (SXS) project [Http:www.black-holes.org] より

 

 

 

ブラックホールの存在が確認された!

また今回検出された重力波は、ブラックホールの存在をも明らかにしました。ブラックホール同士が合体した
際に生じたということで、ブラックホールの存在そのものが確認されたのと同時に、ブラックホールが連星と
なることや、合体してより大質量のブラックホールになることがある、ということも明らかになりました。
さらに研究者らは、解析されたブラックホールの質量について驚いています。というのは、これまでブラック
ホールの質量は、重くても10太陽質量程度と考えられていました。10~100万太陽質量のブラックホールの存在
は確認されていなかったので、今回そのような空白地帯に、30太陽質量前後のブラックホールが連星という形で
同時に見つかった、ということも注目されています。ちなみに、天の川銀河の中心には数100万から数10億
太陽質量に達する巨大ブラックホールが存在することも確実視されています。

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