2021年の記事一覧 記事一覧

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サイエンスカフェPage.42

「銀河鉄道の夜」
~VERAが測る天の川銀河10万光年~
講師: 国立天文台 水沢VLBI観測所 特任研究員 坂井 伸行 氏 
開催日: 2017年10月15日(日) 15:00~16:00

「銀河鉄道の夜」の作者である宮沢賢治が何度も訪れていた遊学館(旧緯度観測所本館)で、「VERAが測る天の川10万光年」というタイトルで講演をさせて頂きました。

「大循環の話なら面白いけど難しいよ (宮沢賢治作風の又三郎より)」で示唆されるジェット気流の話を導入として(*1)、緯度観測所から変遷したVLBI観測所が進めている、「VERAによる天の川銀河の地図作り」の制作状況をお話しました。

1時間という長丁場にも関わらず、小さい子供たちから各年代の方々が、最初から最後まで話を聞いて質問してくださり、サイエンスカフェが地元に根付いているように感じました。VERAの観測完了は2022年です。VERAの銀河地図を使って宇宙旅行できる日を、乞うご期待!

*1:詳しくは、遊学館のHPを参照

担当:坂井 伸行

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「私が体験した東日本大震災~そのとき大地はどう動いたか~」
講師: 国立天文台 水沢VLBI観測所 助教 田村良明 氏
開催日: 2017年6月18日(日) 15:00~16:00

 「私が体験した東日本大震災」という題でお話したが、実は偽りがある。正しくは、私が「体験できなかった」東日本大震災、なのである。地震発生当日は出張中で、その時私は北越急行の特急電車の中にいて、新潟県の越後湯沢駅にまもなく到着するところであった。
地震が発生したとき、もし自分が東北地方の太平洋沿岸地域にいたとしたら、どういう行動をとったであろうか、と想像したことから話の筋を考えた。
この地震は、主要な振動(断層の破壊過程)が2分ほど続いている。大きな揺れが2分も続き、その後も揺れがなかなか収まらない。とんでもない大きな地震が発生したと想像したはずである。ラジオやテレビの報道が無くても「大津波が来る」と叫んでいたと思う。しかし、安全なところまで避難していたであろうか。どこかのビルの3階か4階に避難していて、そこで津波に襲われて犠牲者の1名に加わっていたかもしれないのである。
地震のことは直接的には研究していなかったが、地球の変形や、地面の動きを探る研究(測地学)というものをずっと続けており、地震や津波のことは知っているつもりでいた。震災前に田老町や普代村の防潮堤も見ているし、綾里では津波が30mの高さまで遡上したという所も見ていた。それでも東日本大震災で発生した10mを超える津波というものがどんな物であるか、想像が及ばなかった。自分の知識や経験といったものがいかに不足していたか思い知らされた地震であった。研究の紹介だけでなく、こういった思いを少しでも伝えたいと、資料を用意した。
講演では、GPSを使った観測で、副題にあげた「そのとき大地はどのように動いたか」を示す図や動画を紹介した。地震発生時に水沢の地は東南東に約2.3m、2016年末の時点では地震前から4.0mも変位している。それがどんなに大きな動きであったか、分かっていただけたであろうか。
担当:田村 良明

 

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「月とZ項」

講師: 国立天文台 RISE月惑星探査検討室 准教授 花田 英夫 氏 

開催日: 2017年12月17日(日) 15:00~16:00

地球の自転軸の向きが地球に対して変わるという極運動。緯度観測所が、この観測を始めてもうじき120年になりますが、初代所長木村榮博士が発見したZ項には、最近の研究成果に結びつくものがいくつかあります。

 

Z項の原因は、簡単に言えば地球の外側の中心核が融けているからと、同所の若生康二郎博士は証明しました。地球の流体核は、極運動だけでなく、月や太陽の引力によって地球が変形する程度にも影響を与えます。そういえば、月の中心核も融けているかもしれないと最近の研究は示唆します。

 

そこで、月の自転軸の向きや月面の変形にも、Z項のような異常な変化が観測されれば、逆に月に流体核があることが証明されます。しかし、その大きさは非常に小さく、今後の高精度の観測が期待されます。

担当:花田 英夫

 

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「インターネットが大きく変えた社会」
~ネットの歴史からイノシシ退治の罠、小学校でのプログラミング、働き方改革まで~

講師: 前国立天文台水沢VLBI観測所 主任研究技師・工学博士 佐藤 克久 氏

開催日: 2018年4月15日(日) 15:00~16:00

電子計算機の発達を振り返りつつ遠隔地との情報交換の必要性から発想された計算機間接続や、欧州原子核研究機構CERNの研究者によるホームページの発想を解説し、その後の全世界の計算機やパソコン、スマートフォン、そしてCPU(演算処理)チップを乗せた全ての機器を世界中に張り巡らされた光ファイバーや無線通信で有機的につなぎ合う現在のインターネットについて説明した。

 

さらに、ネット通販や自動水門による田んぼの水やり、イノシシ有害駆除罠の捕獲通知、音声認識による機器操作、自動運転、在宅勤務等の事例を紹介し、これまでの社会システムが一変しつつある事を解説した。特にも小学校では2020年にプログラミング教育が必修化され、予測不可能なことばかりが起こりうるこれからの社会で、自らが必要な情報を得て考え答えを出し実行していく素養を身につける手立てとしてのプログラミングについて言及した。

 

 

 

担当:佐藤 克久

 

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「天の川の中心には何がある?」

講師: 国立天文台水沢VLBI観測所 特任研究員 酒井 大裕 氏

開催日: 2018年6月17日(日) 15:00~16:00

今回のサイエンスカフェでは、子供から大人まで馴染みの深い「天の川」、特にその中心付近で起こっている不思議な現象についてお話ししました。

 

私たちの目には川のように見えている天の川は、実は円盤状の渦巻き銀河をその内側から見ているもので、これには中心があります。そしてそれを電波を使って観測してみると、中心に腰を下ろしている巨大ブラックホールや「トルネード星雲」、「ぶたのしっぽ分子雲」といった奇妙な天体がたくさんあることがわかりました。

 

講演のなかでは、これらの天体がどのようにして出来たのかを最新の研究成果を交えながら紹介しました。終了後も多くの参加者の皆さんから質問をしていただき、興味を持って聞いていただけたことがわかり、研究者としては非常にうれしい限りです。

今回お話しした天体たちは、まさに研究が進んでいる最先端にいる天体たちです。近いうちに研究成果が発表されることもあると思いますのでお見逃しなく!

 

担当:酒井 大裕

 

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「Z項のその後」

講師: 奥州宇宙遊学館 企画開発主幹 花田 英夫
開催日: 2018年12月16日(日) 15:00~16:00

1899年から始まった国際緯度観測では、最初の約1年間の観測の途中経過の発表で、水沢は50点の評価をもらい、波乱の幕開けとなりました。臨時緯度観測所の初代所長の木村榮のZ項の発見によって、この汚名は返上されました。
今回、当時の文献を紐解いて、50点の評価を受けた観測結果がどのようなものだったかを再現しました。その結果、水沢の結果は、Z項を入れなくても決して悪くなかったこと、ドイツの中央局は、とんでもない誤解をしていた可能性があることがわかりました。
Z項の発見は、日本の学界の危機を救ったと同時に、ドイツの中央局にとっても救われたのかもしれません。一方、50点の評価のおかげで、Z項の発見につながったという面もあります。

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「『はやぶさ2』これまでの活躍」


講師: 国立天文台 RISE月惑星探査検討室 准教授  松本 晃治 氏 

開催日: 2019年2月17日(日) 15:00~16:00

リュウグウへのタッチダウンを5日後に控えたタイミングで「はやぶさ2」について話す機会をいただきました。

最初に太陽系の成り立ち、惑星と小惑星の違い(小惑星は惑星の材料の生き残り)、地球に水や有機物を運んだ担い手が小惑星である可能性などを話し、直径約1kmのちっぽけなC型小惑星の探査とそこからのサンプルリターンが、惑星科学的にどのような意義を持つかを説明しました。

次に、探査機の概要、打上げからリュウグウ到着までの道のり、到着からターゲットマーカー投下までの探査のハイライトを、レーザ高度計チームメンバーとしての視点も交えながら話しました。

最後に、着陸運用と人工クレータを作るインパクタミッションの概要について説明しました。

 

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