ブラックホールの模型を作ろう

「ブラックホールの模型を作ろう」奥州宇宙遊学館館長 亀谷 收

目的:
1.宇宙には、確かにブラックホールがあることが観測的に確かめられた(2019年4月)。
ここでは、M87中心のブラックホールの約1千兆分の一の大きさの模型を作ることで、ブラックホールの大きさと構造を知る。
2.ブラックホールはどこにあって、どのように生まれるのかについて知る。そして、まだ分からないブラックホールの謎について考える。

用意するもの
材料:
竹串か竹ひご  1本(太さは問いません。必要な長さは15cm程度のもの)
ピンポン玉 1個 (黒く塗りつぶすので、色はどんな色でもかまいません。)
紙ボウル 1個(スープやどんぶりなどを入れるのに使用するような紙皿で、ペーパーボウル、紙ボウル、紙皿(深型)などの名前で売られています。直径13m~16cm、深さ4~6cm程度のものがベストです。)
A4サイズのボール紙もしくは工作用紙1枚(直径16㎝程度の円盤を切り取ります。)
ブラックホールのイメージ図(表と裏用それぞれ1枚A4サイズ)と全体が黒い紙(ブラックホール内側面用A4サイズ)
1ブラックホールのイメージ図おもて面
2ブラックホールのイメージ図うら面
3ブラックホールのイメージ図内側面

その他使うもの:
黒マジック (ピンポン玉や竹串、紙ボウルの端を塗りつぶすのに使用します)
カッター
はさみ
のり
セロテープ
キリ (ピンポン玉の2か所に竹串が通る穴をあけます。)
下を汚さないための新聞紙など

ブラックホール模型の製作
1.光子球を作る
A.紙ボウルの底を直径5㎝ほどカッターで切り取る。

B.ブラックホール図(おもて面)を丸く切り出す。外側から20か所ほどに切れ込みを入れる。
C.A.で穴をあけた紙ボウルにのりでB.の紙を立体的にはり付ける。

D.紙ボウルのうち、A.で穴をあけた部分の紙をカッターで図のように切れ込みを作る。
E.切った紙を紙ボウルの裏側にはり付ける。

 

2.ブラックホールを作る
A.ピンポン玉の両端2か所にキリで竹串(か竹ひご)がゆるく入るくらいの穴をあける。
B. 竹串(か竹ひご)をピンポン玉に通す。ピンポン玉が簡単に回ることを確かめる。
C. ピンポン玉全部と竹串(か竹ひご)の中央部を黒マジックでぬる。

3.ブラックホール裏面を作るA.A4サイズのボール紙もしくは工作用紙(以下、ボール紙)1枚を用意する。
B.1.で作った光子球のふちの大きさに合わせて鉛筆などで円を書き、ボール紙を切り取る。
C.真ん中に穴をあける。穴の大きさは、2.で作ったブラックホール模型(以下、ピンポン玉)が簡単に入って回る大きさ。直径4cm位)
D.A4サイズの黒い紙1枚とブラックホールのイメージ図(裏用)1枚も同様丸く切り取る。真ん中の穴もあける。

E.ボール紙の真ん中の穴にブラックホール模型を入れ、竹串(か竹ひご)をのりとセロテープで固定する。ピンポン玉が簡単に回ることを確かめる。
F.黒い紙を上からはる。ピンポン玉が簡単に回ることを確かめる。

G.ボール紙の黒い紙の裏の面に、ブラックホールのイメージ図(裏用)をはる。
注意:①ドーナツ状のイメージの中の明るい部分を下に向けた時にピンポン玉が上下に回るような向きに紙をはること。
②ピンポン玉が簡単に回ることを確かめる。

4.ブラックホール裏面と光子球の合体
A.1.で作った光子球の端にのりを付けて、3.で作ったブラックホール裏面のボール紙をはる。
注意:3.Gで作ったドーナツ状のイメージの中の明るい部分を下に向けて、左右に裏返した時に、1.で作った光子球のドーナツ状のイメージの中の明るい部分が上にくる向きにボール紙をはること。ブラックホール模型(ピンポン玉)は上下に回るはず。

B.最後に、黒マジックで紙の間などを黒く塗ったら完成!

ブラックホールについての説明 その1
ブラックホールとは:
1915年にA.アインシュタインによって提唱された重力と時空の関係についての一般相対性理論によって予言された天体
同じ年にK.シュヴァルツシルトによって、一般相対性理論の一つの解として求められた。
非常に重い質量を持つ天体では、光さえも外に出られない領域ができ、ブラックホールと呼ぶ。その領域の境を事象の地平線と呼ぶ。球形の場合、中心から事象の地平線までの距離(シュヴァルツシルト半径Rs)は、天体の質量M(kg)、光速C(2.9979×108 m /s)、重力定数G(6.6743×10−11 m3 /kg /s2)として、Rs(m)=2GM/C2 という式で計算できる。
例:太陽質量(2×1030kg)では3㎞、
天の川銀河中心のブラックホール(太陽質量の400万倍)では1200万㎞、M87中心のブラックホール(太陽質量の70億倍)では 200億㎞

ブラックホールの半径は?
太陽質量では3㎞、
天の川銀河中心のブラックホール(太陽質量の400万倍)では 1200万㎞、
M87中心のブラックホール(太陽質量の70億倍)では 200億㎞

ブラックホールについての説明 その2
ブラックホールのふしぎ:
ブラックホールに入った物は出ることができない。
ブラックホール自体は光を出さないので、見えないが、後ろに光を出すものがあれば、シルエットとして見える。
ブラックホールの周囲では、事象の地平線に近くなればなるほど時間がゆっくりと進むようにみえる。
1963年にR.カーによって、回転するブラックホールの厳密解が求められた。カー・ブラックホールでは、ブラックホールの周りにエルゴ領域と呼ばれる空間自体が回転する領域がある。
多くの研究者は、実際に存在するブラックホールは、カー・ブラックホールであろうと考えている。

今回作ったブラックホール模型についての説明
このブラックホール模型は、2019年4月にイメージが発表されたM87銀河(右上図)中心にある巨大なブラックホールの約1千兆分の一の大きさの模型である。

表側(下図):発表されたブラックホールのイメージを立体的に表した。明るく球状におおう光子球と中に隠れたブラックホールの本体の関係を示した。なお、本物のブラックホールや光子球は、固い表面を持たないので、触ることができないことに注意。

光子球とは、ブラックホールの周りで、光が回り続ける球状の部分で、これより内側は黒い。本当は、薄い球だが、観測した装置の解像度の限界の為、少しピンボケになり、ドーナツ状に広がって見えている。

裏側(下図):発表されたイメージを平面的に示して、実際の大きさとブラックホール本体との関係を示した。光子球の直径は、ブラックホールの直径の約2.6倍ある。(本当は1.5倍しかないが、重力レンズ効果によって、大きく見える。)また、光子球(大きさを青い円で示した)の一部が明るいのは、ブラックホールが回転しているためであるとする考え方を模型で表した。ブラックホールを表すピンポン玉が下から上に回転していると考える。

ブラックホールのふしぎ
多くのブラックホールでは、物を吸い込む時に、周りに回転する円盤ができる。また、その円盤に垂直にジェットと呼ばれる超高速の物質の流れが見つかっている。どのようにジェットができるのかが、現在、最大の研究のテーマである。

ブラックホールについての説明 その3
ブラックホールのふしぎ:
ブラックホールは、大きく分けて2種類ある。
1.重い恒星の一生が終わった後にできる。太陽の質量程度から数十倍の質量のブラックホール
2.銀河の中心にある、太陽の100万倍以上の質量の超巨大ブラックホール
*現在、特に2.の超巨大ブラックホールがどのようにできるのかは、研究の大きなテーマになっている。
*現在、イベントホライズンテレスコープ(EHT)などの電波観測研究に加え、X線、重力波などの観測研究とス―パーコンピュータを使った理論・シミュレーション研究などにより、ブラックホールの研究が急速に進んでいる。