沿革

奥州宇宙遊学館

 平成20年4月にオープンした「奥州宇宙遊学館」の建物は、大正10年日本で最初の国際的な観測所、緯度観測所本館として建てられた大正時代の建物を再構築し、再現したものです。当時としては珍しい、望楼を持つ木造2階建てのドイツ風建築で、昭和42年まで使用されていました。国立天文台は老朽化に伴い、平成17年10月に取り壊しを決定し、翌年2月に解体する予定になっていました。

 その時期にたまたま宮沢賢治学会の一行が旧本館の見学に訪れ、解体撤去の報を聞き、賢治が度々訪れ「風野又三郎」や「銀河鉄道の夜」など名作を生んだこの貴重な財産を何とかして残して欲しいと口々に言って帰って行きました。その後、その話が全国の学会員に伝わり、保存の声が広がって行きました。

 早速、我々イーハトーブ宇宙実践センターの会員等が保存のために動き、やがて大きな市民運動となり、当時の国立天文台、市、市議会を動かし、平成19年2月11日の市民集会を経て、4月4日に国から市への建物の譲渡が決定しました。と同時に「奥州宇宙遊学館」として活用するためのプロジェクトチームが編成され、20回を超える会議を重ね、すぐに建物の耐震改修工事等が行われました。それが現在の遊学館となっています。国内では珍しい木造の天文学習館として、全国に情報を発信し続け、非日常的なレトロな空間の中での、宇宙体験を味わいに多くの来館者でにぎわっています。

 奥州宇宙遊学館は今年(平成28年)満9歳を迎えました。緯度観測所の旧本館を保存活用しようと市民が立ち上がり、発足した施設です。施設は国立天文台水沢VLBI観測所のキャンパス内にあり、天文台の歴史的な天文機器、天文台・JAXAの協力の下に現在使用中の装置も見学でき、またこれまでの成果を紹介しています。宇宙遊学館はその名前の通り、子どもや高齢者をはじめ、一般の方々に遊びながら天文や宇宙について学べる展示と工夫を心がけています(詳細については「イベント情報」のページをご覧ください)。天気のいいときは国立天文台の広いキャンパス内で、幼稚園・保育園の子どもたちと先生の笑い声が聞こえてきます。

 緯度観測所は明治32年に観測を開始し、平成28年現在117年の歴史を有します。現在は国立天文台水沢VLBI観測所となり、天の川銀河の地図作りやダークマターの検証、またわが国最初の本格的月探査機「かぐや」で月の地形や内部構造解明といった最先端の研究を行なっています。

奥州宇宙遊学館外観